どっちが”合う”?教員→サラリーマンに転職したときのメリット・デメリット6つ
他のSNSや本ブログなどで「教師への転職」「教員になるかサラリーマンになるか」といったご相談が少しずつ増えてきました。大変ありがたいことです。
サイトにお越しいただく方も、一番多いのはこの記事をきっかけにした方が半分以上を占めています。
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逆に、現在教員をされている方の中に民間企業への転職を考えている方もいらっしゃるのでは?という仮定のもと、今度は「教員から民間企業への転職」におけるメリットとデメリット(リスク)を整理してみたいと思います。
まず、メリットから。
①コミュニケーション能力
最初にパッと思い浮かんだのはコレです。子ども、保護者、地域住民、同僚、他校の同業者、スポーツ用品店をはじめとしたパートナー企業、コミュニケーションする相手の幅が広いことが、民間企業に転職しても職種・業種によっては優位に働くと思われます。
保護者や生徒によっては、カウンセリングマインドが求められることがしばしばです。店舗などでにおける、toC営業などでは経験が生かせるのではないでしょうか。
②マルチタスク能力
教員は、こまごまとした仕事が多いです。1つ1つの仕事は難しいものではないのですが、細かいことまできちんと整理してモレなく進めていく仕事力は、ビジネスでも役立つはずです。
③気配り・目配り・心配り力
対生徒では、常にアンテナを張って情報を仕入れるようにしています。楽しく生徒とおしゃべりしていても「不安要素はないか?」「不登校傾向にある〇〇さんの情報はないか?子の子から引き出せそうか?」などを頭の片隅に置きながらおしゃべりします。
生徒同士のコミュニケーションも、休み時間や私の移動中に教室の中をふっと観察して、妙な気配やシグナルがないかを気にして動く。
教員間でも、担当する業務に応じて抱える悩みや問題の見え方が異なりますので、そのあたりを加味して、お話を聞き、もっとも子どもの成長につながる方策を固め、チームで動く。
この辺りは、ビジネスをしていたころにも求められる能力でしたので、経験が別の形で生かされるのではと思います。
④給料アップ
公務員の給与設定は、民間の平均給与額をもとに算出されていますので、高くもなく、低くもない(実際はもうちょっとほしいですけど…ごにょごにょ…)給料。民間企業であれば、業界や会社の業績、個人成績次第でグンとアップする可能性があります。
⑤世界が広がる
教員ですと、やはりどうしても生活は学校、広がっても学校のある地域、という限られたコミュニティの中になってしまいます。
ビジネスの世界に身を投じると、自分がいる業界にもよりますが、さまざまな業界との結びつきがあります。TVで流れるニュースや経済紙などを読み、時代の流れと次の動きを予測し、行動する。こんな動きだけで世界は一気に広がります。
⑥ホメられる
上司に褒められたり叱られたりします。学校って、こういうことが少なくありませんか?管理職も学年主任も、あくまで役割をやっているだけで教諭を叱る、ということは職場全体で見ても年に数回あるかないかです。
逆に、ホメられることもあまりありません。保護者や生徒から感謝されることはあっても、同僚や学年主任、管理職にホメられる機会は、ビジネスの現場よりずっと少ないように感じます。教員をやっていて、寂しくなる瞬間はだいたいホメられ不足です。笑。
ビジネスの世界なら、日々褒められたりけなされます。私の前職ではそうでした。これも勤め先次第かもしれませんが…
以上6つ。前半3つはメリットというより、ビジネスに応用できそうなスキルですね。どうもメリット、と言われてしまうと、意外とピンと来ないものです。これは、私が教員に転職してよかった、と満足しているためでもあるのでしょう。今時点では、もう一生ビジネスの世界に身を投じないだろう、と思っていますから。
本来であれば中立的な立場で書きたいのですが、どうしてもこうなってしまうことをお許しください。教員から民間企業へ転職することのデメリット、まとめていきます。こっちはスラスラ出るんですよ…悲しいことに。苦笑。
①仕事についていけない?
ビジネスの世界はシビアです。会社は利益を出してナンボです。金にならない仕事をしようものなら、すぐに上司からお叱りを受けます。
教員の世界は、ビジネスの現場以上に時間ごとにすべきことがはっきりしています。授業の時は目の前の生徒としっかり向き合って授業を展開し、授業がない時間は授業からエスケープした生徒の相手や保護者との面談、部活動関係の準備とスポーツ用品店との折衝、クラスの面談予定の作成や次の授業準備、委員会の指導計画作成や学活計画立案など、その他もろもろ。
このその他もろもろの間、ちょっと休憩することもあります。それはもう、かなり気の抜けた状態で。苦笑。
生徒の休み時間は一緒に外で遊ぶといいストレス解消になりますが、ビジネスの世界で、スーツを着たままドッチボールをする中年男性がどこにいるでしょう?
目の前の仕事に集中する時間が非常に短く、細切れなのは教員独特の働き方のような気がします。私はビジネスマンの頃は営業職が一番多かったですが、よく1日中も新規アポイントのための架電をしていたな、と感心するほどです。今となっては絶対ムリです。苦笑。
②転職先が少ない
正直、もし私が企業の採用担当であれば、元教諭は絶対に採用しないと思います。なぜなら、良い人はいるかもしれないけれど、リスクが非常に高いからです。これは、新卒の学生を採用する企業側が「学歴フィルター」を設けるのに近い感覚です。
教員から民間企業へ転職することでのメリットは前述のとおりですが、ビジネスに生かせそうな能力も、実際に働いてみないと生かせる(≒自分のもつスキルをビジネス用にカスタマイズして発揮させることができる)かどうかは非常に怪しいところです。
直接的に使えそうな生徒指導力や教科の専門スキルなどを考えると、やはり塾や予備校、スポーツスクールなどのコーチあたりが現実的なのかもなぁ、と考えてしまいます。
もし企業側に知人がいて、人柄がある程度保証されているのであれば、転職ハードルも多少は下がるかもしれません。いわゆる”コネ”です。それがない限りは、決して転職は楽な道のりではないだろうと予想できます。
③ITスキルが足りない
学校のITリテラシーは10年以上遅れています。これは冗談抜きで事実です。PCが好きな人でスキルが高い人もいますが、大半、特に40代以上の教員は、教員でありながら新しいスキルを習得することを避けて、自分の今までのやり方を押し通そうという方が多く、なかなか新しいやり方についてきません。
そんな状況なので、ビジネスで必要とされるWord、Excel、PowerpointのOfficeソフトを扱うスキルは育ちにくいのが現在の学校教育現場です。
④自然に笑ってはいられない
これも私だけでしょうか?子どもを前にすると、笑顔でいることが多いです。子どもたちの笑顔に癒されたり、おバカなことを言う生徒が可愛くて笑ったりしています。
ビジネスの現場で出る笑顔は「作り笑い」「愛想笑い」になることの方が多かったです。それはもうストレスでした。
⑤不安定
公務員とサラリーマンの大きな違いのひとつです。私は前職に勤務して数カ月の頃、上司に「お前、来月の給料ないかもしれんぞ?」と脅されたことを今でも覚えています。私も営業数字が上がっていなかったのですが、会社全体として危機的状況だったことも重なり、このようなことを言われてしまいました。我ながら情けない…。
会社は生き物ですから、業績が上がらなければ倒産したり解散したり、社員はクビになったりします。ちょうど今でも、某大手電機メーカーが不正会計で追い詰められている状況ですよね。リストラや減給等の話もじきに出てくるでしょう。
公務員だって、この先国が潰れてしまえば待遇など保証されたものではありませんが、国が抱える社員を低賃金で扱おうものなら、国への信頼も下がりますから、公務員の劇的な賃下げは最終手段では、というのが私の見取りです。安定感では民間企業より公務員のほうが分があるのは間違いないでしょう。
⑥動けない
教員は常に動いています。行ったり来たり、体が資本。ホワイトカラーの肉体労働、とでもいえばよいのでしょうか。パソコンとにらめっこして1日を終えるようなビジネスパーソンとは働き方がまるで違います。
前述した集中力の話と重なりますが、座りっぱなしの仕事をしている自分の姿が想像できない人は、デスクワークが求められる民間企業への転職は控えたほうがいいような気がします。
…と、思いつくままに挙げてみましたが、他にもいろいろありあそうです。メリットもデメリットも。
最後は、自分が「どんな働き方をしたいか?」がすべてです。教員のほうがいい!とか、民間企業のほうがいい!とかではなく、相性です。私の場合は教員という働き方がピッタリはまっただけ、のことです。
果たして「教員→民間企業」という転職ルートを検討している方が読んでくださったのかわかりませんが、なにがしかの参考になれば幸いです。