中学校の先生のホンネ

サラリーマンから公立中学校の先生に転職した私が、現場の実際のところや日々感じること、思うところをまとめていきます。これから先生になろうと考えている人、現場の先生がただけでなく、学校と何らかのかかわりのある全ての方に読んでもらえたら嬉しいです。

教科・部活・役職・年数・未来予測…複雑怪奇な学校のストーブリーグ

あっという間に3月。明日、卒業式というのがオドロキです。ブログも気づけば2か月近くほったらかしになっていました。 更新したい気持ちはあったのですが、家に帰ってくる時間も遅く、記事を書く元気がなかったのが正直なところ。それだけこの1~3月が忙しかったんです(詳しくは以下の記事よりご確認ください)。

 

challenge-teacher.hatenablog.com

 

ところで、2・3月になるとザワザワと噂が立つのが来年度の人事。私はこの時期の妙なワクワク感と不安が入り混じった”まどろみ”が好きです。笑。

 

サラリーマン時代にも異動はありました(しかも結構頻繁に、です。おかげさまで総務から企画、広告宣伝、営業まで、幅広い業務を担当させていただきました。笑)が、学校の人事異動というのはかなり複雑。そう一筋縄でいくものではない、ということが、現場に入って年々わかるようになってきました。

 

 

まず、公立学校の教員には異動があります。しかもその異動は年数が決まっており、初任者(いわゆる新人)は最初の勤務校に6年(最大7年)在籍することができますが、最短3年(私が知る例では2年、という方もいました)で異動することもできます。最大7年、というのは、校長の権限で”学校のやむを得ぬ事情”により+1年、在籍させることができるという制度です。

 

既に在籍2校目以上の場合には、6~10年が基本路線となっているようです(これも最短で3年、という話を聞きました)。この年数が決まっているので、卒業した母校に大人になってから遊びに行っても、知っている先生はほとんどいない、という状況に陥ります。5年もすれば、ほとんどの教員が入れ替わっていても不思議ではありません。私の勤務校はちょうど人の入れ替わりの時期だったらしく、私が着任した年は13人もの新しい教員が入り、14人の先生が異動/退職されました。職員数の実に3分の1にあたる数です。

 

この時、異動/退職された14人の先生方というのは、あらかじめ校長に呼ばれて面談の中でその話をそっと知らされます。これはクビだ!というようなネガティブな意味だけではなく、教員が自ら異動したい、という要求を出し、それをOKしてくれたという前向きなケースがほとんどです。

 

もちろん、異動の理由には後ろ向きなものもあります。この学校には私は合わない、職員間の関係が良くない、この地域の子どもは好きになれない(残念ながらこういう言い方をする人もいます)、などなど…

 

そんなひとりひとりの先生方の意向を一手に引き受けて、なんとか人材のやりくりをするのが管理職、すなわち校長先生です。いち教員としては、本当に大変だろうなと心中お察しします。苦笑。なにせ、一般企業と異なり、教員の異動というのは様々な「軸」があるからです。

 

 

 

例えば、一番わかりやすいのは「教科」です。

 

学校の規模というのは、ひと学年1クラスの学校から10クラスの大規模校まで様々です。小さい学校なら、複数学年にまたがって1人の先生が英語を教える、というのはよくある話です。

 

文科省から「各学年でこの教科は週に◯時間やりなさい」という所定数が定められているので、それに見合うだけの教員数を確保するわけです。まずはこの軸から優先的に考えているのではないかと思います。

 

 

 

次に「担任」です。

 

正直、現場にいると「この人、絶対担任やっちゃダメな人だろ…」という方、います。思想が思いっきり偏っている、ヒステリック、高齢に伴う心身の低下でついていけない、そもそも愛情がない、などです。

 

また、女性の方で小さいお子さんがいらっしゃったり、結婚したての方で妊活を進める場合には、年度途中での離脱による教員補填のほうがリスクが大きいので初めから担任の頭数には含めません。

 

また、各学年で男女比、若手とベテランの人数バランスを整えることも必要です。特に男女比については、母子家庭や父子家庭の増加に伴い重要性が増しているのではないでしょうか。中学生の場合、小学生の時に性的暴力を受けたりトラウマ的体験から「男の先生はちょっと無理…」なんて子もいます。男手だけでやっていくのは結構キツイです。生理などの際に相談をしづらい、なんて面もありますし。

 

 

 

そして、各学年の担任をまとめる「学年主任」を誰にするか、です。

 

学校には地域性があり、異動先では前の学校でやってきたことが全然通用しないよ助けて!なんてことはよくあるようです(今年、私の勤務校に異動で来られた方は保護者の大クレームに始まり子どものバッシングにあい、大変な思いをされています…あぁ恐ろしい…)。

 

そうなると、学年主任には「勤務校に今いる職員から選ぶ」ということが多いようです。年齢的な面や経験を考慮すると、だいたい限られてきます。これで、大まかな学校の基礎が出来上がっていくと思われます。

 

 

 

続いて「校務分掌」です。

 

学校を運営するにあたり必要な仕事を、各職員で分担していくわけですが、最低限、各部署の部長だけきちっと人選をしていれば、仕事は回ります。何もしない部長、それこそマネジメントをしない部長になった場合には意味のない無駄な仕事をやることとなったり、子どもに余計な負担を強いることになります。

 

と、ここまでは短期的な目線で、学校の根幹である授業と学級経営の観点から考えたものです。ここからは、「異動」という制度がもたらす人事の苦悩です。苦笑。

 

 

 

少なくとも、私の所属する自治体の中学校では「2年から3年に進級する時には、ほとんどの職員がそのまま一緒に進級し、引き続きほぼ同じ職員が担当する」のが通例なようです。…が、考えなければならないのはそのさらに1年後です。

 

例えば、現在2学年を担当する職員が全員、2年後、すなわち3年生が卒業と同時に異動対象年数勤務となった場合、起こることはちょっと大変です。

 

通常の流れなら、3月に卒業生を出した3年生担当職員は、4月から1年生を担当することとなります。しかし、職員が誰も残らないとなると、異動で新しく来られた先生方や、他の学年から”移籍”してきた先生で構成されます。つまり、お互いの仕事のやり方を理解しないままに4月から仕事がはじまるわけです。

 

どれだけ優れた教員でも、互いのことを知らずして仕事がうまくまわるはずがありません。民間企業では、他部署からの寄せ集めでプロジェクトを組むことはあると思いますが、それは「プロジェクトのゴール」という共通目的があってのこと。学校の場合、教育目標があってもそこを目指す一枚岩の組織ではない(少なくとも本校はそうです)ので、生徒指導ひとつとっても方向性の違いが生まれ、職員間で足並みがそろわないこともしばしばです。

 

なので、できる限り人材の流動が各学年ごと、緩やかになるように「異動/退職までの年数」を逆算して人事配置を組んでいると思われます。

 

 

 

また「部活動顧問」も大きなポイントです。これも職員の退職/異動を考え、引き継ぎができるように人材登用しておきたいところです。でないと、その学校でのやり方や地域柄などを知らずに指導をすると、保護者との大きなトラブルに発展しかねません(実際のところ、今年度、本校ではある部活動でトラブルになっていました)。

 

勉強を重視するあまり部活動に後ろ向きな地域、家庭での時間を大切にするので土日の活動を控えてほしい地域、素行が悪いから体罰でもなんでもガンガンやってくれという地域、勝利至上主義が根付いた地域、などなど…その土地その土地の風土に合わせる必要があります。変えていくのなら、3~4年くらいを転換期とみて、地域と関係を作りながらゆっくりのほうが平和的に事が進んでいきます。

 

 

 

…長くなってしまいましたが、様々な思惑が複雑に絡み合っていることは伝わりましたでしょうか?昇進がどうとかではないのです。4月から再び学校を運営していくためにどうするかという視点があるだけですが、教科や年数などの「軸」がたくさんありすぎて、管理職が頭を悩ませるわけです。ここに各職員の思惑と希望も出てくるわけですから「好き勝手言いやがって…(怒)」と思うでしょうね。苦笑。

 

かくして、私の人事はどうなるのか!?明後日、異動してくる先生方の詳細が明らかになるようなので、ドキドキしながら明日の卒業式に臨みたいと思います。笑。