中学校の先生のホンネ

サラリーマンから公立中学校の先生に転職した私が、現場の実際のところや日々感じること、思うところをまとめていきます。これから先生になろうと考えている人、現場の先生がただけでなく、学校と何らかのかかわりのある全ての方に読んでもらえたら嬉しいです。

【中学校】全員顧問制を廃止してみた。「1部活動1顧問」の顧問希望制にした結果・・・

2018年年明け早々にブログ再開を宣言したこともあり、多少の義務感と「老後の趣味を増やしておきたい」という意欲がふつふつと沸き、様々なことにチャレンジしている最近です。

 

最近手を出したものと言えば、

 

・漬物教室(来月、地域のNPO団体が主催する教室に参加しますw)

ウクレレ(某TV番組で芸人さんが弾いているのを見て楽しそうだなーと)

・読書(年始に会った父に勧められて読み始めた本がきっかけ)

 

あたり。老後にブログを書こうとは思っていませんが、教師である以上、なるべくイマのものや、新しいものに触れて感性を研ぎ澄ますことは大切。そんな思いでいます。

 

娘はすくすくと成長して、ちょっと私たち夫婦にも余裕が生まれてきましたので、こうした「仕事」「家事」以外の時間を充実させる1年にしたいと思います。

 

さて、気持ちの落ち着いている今だからこそ、ブログ記事を更新し、イマの学校現場がどうなっているのかを記録として残しておきたいと思います。

 

 

実は私の勤務校では、2年前に管理職が代わり、こう言いました。

 

「部活動はボランティア。やりたくない人は顧問をやらなくていい」

 

これまで、勤務校で行っていた、職員全員が顧問として就く「全員顧問制」を真っ向から否定する方針で、現場には驚きが広がりました。着任して1年目こそ、前年度からの引き継ぎもあったので叶わなかったものの、昨年の4月、つまり今年度は「全員顧問制」が廃止され、本当にやりたい人だけが顧問をやるという形に変わったのです。

 

現場の驚きは、ほとんどが2つの方向性に分かれました。

 

「やったー!(これで顧問やらなくて済む! ※40代以上の、主に女性の先生)」

「やったー!(これで名前だけの顧問がいなくなってやりやすい!) ※20代~30代の若手が主)」

 

つまり、大勢の職員が喜んだんです。

 

全員顧問制にすると、顧問をしたくない人がしなければならないし、顧問を(ひとりで)したい人にとっては迷惑な話。

 

一方で、以下のような危惧する人も一定数いました。

 

「・・・(顧問って1人でできるのか?平日の放課後、出張で外に出たら部活動の指導や安全管理などは誰がやるんだろう?練習試合で遠征した時にケガや体調不良者が出て病院に付き添ったら、残された部員の安全は保証できないし…合宿とかも簡単には行けないぞ)」

 

私も心の中は「やったー! 7:3 大丈夫かなぁ…」という感じでした。ましてや、部活動顧問をやるからといって仕事量は配慮してくれるわけではありません。なにせ、好きで、希望して顧問をしているからです。そこには一切の配慮もありませんでした。

 

この部分については、管理職もリスクヘッジをしていました。

 

「顧問をやらない先生は『お助け顧問』として、輪番で各部活動のサポートをしてもらいます」

 

管理職の考えは、顧問が出張等の不在の際には『お助け顧問』が指導や解散、病院付き添いなどを行い、主顧問のサポートをしよう、というものでした。今までに聞いたことがない仕組みでしたが、前向きに受け止めました。

 

 

 

さて、その結果、私の職場はどうなったか、これを読んでいるあなたは想像できますか?時系列で見ていきましょう。

 

 

 

①顧問の決定

 ちょうど1年ほど前の3月。次年度(つまり今年度)の最終人事面談が行われ、部活動顧問についてはこの段階で決まります。

 管理職は希望制と言ったものの「顧問がいない部活は廃部にします」と明言し、現在の主顧問が断りづらい状況が作られました。これは某国民的民放ドラマのフレーズを借りるなら「良心の搾取」です。私の一存で、一緒に頑張ってきた子どもたちの活動を無くしてしまう、というプレッシャーがあっては、簡単に「やりたくないです、やめます」とは言えない。おそらく管理職は、これで全部活動の顧問が揃うと思ったのでしょう。

 ところが、それでも一部の部活動に顧問の希望が出ない。そこで管理職は「お願いをする」とし、頭を下げて昨年度の先生や新たな先生に顧問をお願いして、何とか「顧問不在のため廃部」という結果は免れました。ただし、どの部活動も基本的には顧問が1人、という状態になり、新年度をスタートすることとなりました。顧問をしない職員は、全数のおよそ半分でした。

 

②『お助け顧問』の崩壊

 「全員顧問制」を廃止し、それを埋めるために用意した『お助け顧問』制度はまったく機能しませんでした。仕組みの問題もあるかもしれませんが、以下のような理由です。

・『お助け顧問』は小さいお子さんがいる家庭が多い=帰りが早い=部活動の指導はできない=頼めない

・『お助け顧問』の運用が正直煩わしいものだった(運動部の場合、グラウンド部活動なら、グラウンド部活の他顧問にお願いする方が簡単)

『お助け顧問』自身が、部活動に興味関心が薄く、顧問を外れたので「助けよう」という気持ちがほとんどなかった

 

理想と現実、という言葉がこのあたりで頭をよぎります。

 

③地域からのクレーム

 年度も後半に差し掛かると、複数の部活動で顧問に対するクレームが管理職や教育委員会あてに入るようになりました。勤務校の地域柄、部活動の運営についてモノ申して下さる保護者の方が多いのはありがたいことなのですが、顧問が1人になったことで、これまで相談窓口となっていた第二顧問がいなくなったためではないかと考えています(学年職員に相談してくれればいいのに・・・とも思うのですが)。

 クレームの中に「顧問をなぜ1人にしたのか」という意見はなかったのですが、前年度までほとんど部活動のクレームがなかっただけに、顧問体制の変更はなにがしかの影響があったのではないかと、個人的には思っています。

 

 

 

…結果、管理職は「全員顧問制を廃止したのは失敗だった」と認めています。

 

希望制で顧問を募ったために、顧問を外れた人は部活動の運営に関して当事者意識はゼロになり「希望した人に任せればいいじゃない。やりたくてやってんでしょ?」というスタンス。顧問をしている先生(の一部)は「こっちは部活やってんだから校務分掌少し手伝ってよ!あんたたち暇でしょ!?」というスタンス。うーん、最悪の結末です。苦笑。

 

仕組みとしては悪くなかったと思うのですが、勤務校の職員には全くマッチしなかったと思われます。これも継続して、職員意識を変えていけば機能するかもしれませんが、まだしばらく時間がかかるのではないかと思います。

 

現在はワークライフバランスを、と盛んに報道されています。教員の場合、大事なことは「子どもたちのために」を主目的にしながらも「働く側の健康を維持する」ことを両立させることです。部活動顧問を希望制にすることは、顧問をしない人にとっては「ワーク」を抑え「ライフ」を守った。顧問をする人にとっては「ワーク」が増え「ライフ」は以前と変わらず。結局は、一部の職員に仕事の負担が大きくなるばかりか、クレーム対応や子どもの部活動への不満が高まり、精神的に不安定になった生徒のケアなどの時間が増えて業務が増えてしまった面もあります。

 

一筋縄ではいかない、部活動。どうするのが正解なのか、これからも現場で模索し続けていきたいと思います。

 

追伸:同業の諸先輩方、部活動顧問は全員顧問制ですか?希望制ですか?