中学校の先生のホンネ

サラリーマンから公立中学校の先生に転職した私が、現場の実際のところや日々感じること、思うところをまとめていきます。これから先生になろうと考えている人、現場の先生がただけでなく、学校と何らかのかかわりのある全ての方に読んでもらえたら嬉しいです。

仕事の進め方、おかしくない?サラリーマンから教師に転職して感じた3つのこと

お盆に入りました。世間はお休みの会社が多いようで、いつもの通勤路もずいぶん車が少なかったです。

 

4年前の今頃、私はスーツを身にまとって都内で営業活動に勤しんでいました。

 

「お盆ってなにそれ?おいしいの?」という雰囲気の社内(怖…)。ひたすらに営業用の架電(営業電話をかける)リストを作ったり営業資料を作ったりと、休みなく働きまくっていたことを覚えています。

 

外回りの営業活動は暑くて死にそうでした。Tシャツとハーフパンツで過ごす毎日に慣れた今となっては、もうあの生活には戻れませんね(笑)

 

 

昨今の教育業界は、企業での就業経験がある人材を登用したがる傾向があるという話を聞きましたが、本当でしょうか?

 

企業出身の校長先生(教員免許がなくても、企業での経験を生かして校長になる先生)も今は珍しくなく、何か新しいことをしたい、という動きまでは見えてきます。

 

www.excite.co.jp

 

www.sankei.com

 

resemom.jp

 

うまくいっている事例も少なくありません。企業での就業を経て、という点では私も同じですので、一度どこかでお仕事をご一緒できたら、という思いです。

 

企業出身の校長先生のメリット・デメリットについては以下のサイトにまとめられていました。

 

教員免許がなくても校長先生になれちゃう「民間人校長」ってなに?-教員採用試験対策/教師・教職の募集情報|教員ステーション

 

では、校長先生などの管理職ではなく、現場で汗水流す教諭についてはどうなのでしょう?

 

 

 

多くの自治体では、企業での就労経験や青年海外協力隊などでの経験を考慮して、採用試験での負担が軽減されたり、別の試験が用意されているのが現状かと思います。私もその仕組みを利用して試験を受けて、某自治体に採用されました。

 

私は企業勤めの頃、土日もずっと仕事、1日の睡眠時間は平均3~4時間、徹夜も当たり前のような超過酷な労働環境でしたので、採用試験の勉強をする時間があまり取れない私にとって、この制度は本当に助かりました。

 

私がサラリーマンから教師に転職して感じたことは、次のようなことでした。

 

 

 

1.仕事が「職人芸」で成り立っている

それまでの私の仕事観では、仕事はチームで行っているものであって、納期があり、連絡や確認を密にとり、承認フローがあって初めてアクションできて…という、なんというか、もっとカチッとしたものが常識だと思っていました。

 

しかし、4月1日の最初の出勤日、職場に行って最初に学年主任の先生から言われたのは「ねぇ、Excel使えるんでしょ?学年名簿、作ってもらえる??」という一言からでした(笑)。

 

仕事をふってもらうのは全然かまわないのですが、納期も言われない(始業式は目前なのに!)し、最終的なアウトプットのイメージも持ってらっしゃらないなど、とにかく当時は頭の中を「?」が埋め尽くしました。

 

今となっては、当時の主任の仕事の振り方にも問題があったのだということもわかりましたので、これが普通ではないとわかっています。ですが、それでも、校務分掌をチームで進めていくときには、今も「仕事の進め方が相当ザックリしてる、絶対無駄な仕事が出てくる…やだなぁ…」と思うことが多いので、どんなに運営委員長や指導部長に嫌な顔をされても、ニーズを細かいところまで確認して進めています。仕事の時間短縮ができれば子どもとかかわれる時間も増えますからね。

 

そして、個々人が抱えているタスクをシステム化しているわけでも共有化されているわけでもないので、「この仕事、この先生が異動・退職されたら誰がやるんだろう?誰もやり方わかんなくね??」みたいな仕事がゴロゴロ転がっていました(怖)。案の定、当該の先生がいなくなったら学校は大慌て、みたいなことが、2年目、3年目の時に起こっていました。これでは学校を良くするという点にエネルギーを割く余裕もなくなってしまいます。

 

 

 

2.マネジメントがあまりない

企業での就労経験が3年あったこともあり、採用1年目から1年生の担任を任されました。

 

冒頭でも書いたように、私の場合は企業での就労経験を考慮した採用でしたので、教職教養や一般教養、専門教養などをあまり勉強しておらず、学級経営の「が」の字も知らないという、今思えば超危険人物でした(笑)。

 

他の先生方は自分のクラスがあるので学活にはどんどん行ってしまう。学年主任も副担任も自分の仕事があるからか、懇切丁寧に指導…ということも何もありませんでした。

 

企業の場合、中途入社でもOJTがいくらかあって、現場で独り立ち、というのがふつうだという感覚があったので、この状況には泣きそうになりました。もちろん、勉強不足だった私が一番ダメなんですけどね(苦笑)。

 

たとえば、学級組織決め。

 

何の係が必要かもわからない、学級委員の決め方もわからない、どうやって決めたらよいのかもわからない、と、わからないことだらけ。なんとなーく、自分の記憶を引きずり出して「こんな係があったような・・・」という”勘”で係を決めたところ、クラスは大混乱。全然生活が成り立たない、クラスは沈没船状態で半年間を過ごすことになりました(泣)。

※その後、私のクラスは後期に入って「学級改革!」と銘打ち、先輩方に教えをいただいた学級経営術を惜しみなく使い、何とか学級崩壊一歩手前で踏みとどまりました。

 

これは昨今から叫ばれている「40代教員の不足」という要因もあるかもしれませんが、それにしたってあの放置プレイは今思い出してもひどい…

 

 

3.一枚岩になっていない

私が就労していたのはいわゆるベンチャー企業でした。社員数も30名前後と少なく、会社の経営理念や行動規範などは全社員が共有していて、同じ方向を向いていました(と思います。そうでない人もいたかもしれませんが…汗)。

 

一方、学校ではどの学校にも教育目標がありますが、教育目標を暗唱できるほど頭に入れて仕事をしている先生はほとんどいません。教育目標とは真逆のことを平気で行う先生もいます。きっとこれは私立の学校ではもう少し状況が違うのでしょうね。

 

学校を運営していくという大目的の達成のためにひとつのチームで仕事をするうえでは、見ている方向を揃えることはとても大事なはず。ですが、先生になった方というのは、とても仕事に対して誇りを持っていたり、大事にしたいポイントが先生によってかなり違います。180°真逆のことを大事にしている先生が同じ職場にいることだってザラでした。

 

働いていくうちに「あぁ、学校で一枚岩になるのは現実問題、難しいんだな」と、やや諦めの気持ちもでてきたほどです。異動などのしくみもそうさせる要因ではあるので、先生というよりシステムの問題も大きいと思います。

 

 

 

一般企業から転職して教師になる、というキャリアを進んだことで得られたメリットは、次のようなものです。

 

〇PCのスキルが学校で求められる以上の能力になっていた

〇営業をしていたので、話すことに慣れていた(見せ方・伝わり方にこだわる)

〇いかに教師が恵まれているかが身に染みてわかった

〇学校外の世界について、より生徒に説得力のある話ができた(特に進路指導)

〇学校の仕事を進めていく上での文化が、社会の常識ではないことに気付けた

〇学校でどんな仕事をしても「楽だなぁ…」と感じた

(土日の部活出勤なども、以前と比べれば全然良い…と感じています)

〇雇用が安定した

 

逆に、デメリットはこんなところでしょうか。

 

×企業での仕事の仕方にこだわりがちでイライラしてしまう

×大卒ですぐに教師になった方と比べて、教員経験が少ない

 (良くも悪くも、自分が若い時期に教壇に立っていない。年をとっている)

×大卒ですぐに教師になった方と比べて、給料が少ない

×残業代がつくこと前提で仕事をしていた人は、無給業務に我慢ならない

×教職教養などの知識が乏しい

×給料のジャンプアップは見込めない

×クビになるリスクが常に身近に転がっている

×企業に再度転職するのはメンタル的にもスキル的にも非常に難しくなる

 

直接的に役立ったことはあまりないですが、私は企業で働いたことは遠回りにはなったものの、経験して本当によかったなと心底思います。死にそうなくらいにしごいてくれた会社の上司には、本当に感謝しています。育ててもらったのにワガママを言って転職させてもらったことにも感謝の極みです。

 

だからといって、必ず必要かといえばそうでもないなぁ、というのも正直な感想です。今学生で「企業に勤めてから先生やろうかな…」と迷っている方がいれば、何かの参考になれば幸いです。

 

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!