中学校の先生のホンネ

サラリーマンから公立中学校の先生に転職した私が、現場の実際のところや日々感じること、思うところをまとめていきます。これから先生になろうと考えている人、現場の先生がただけでなく、学校と何らかのかかわりのある全ての方に読んでもらえたら嬉しいです。

学業<部活動? 「〇〇部、全国大会出場」の舞台裏

中学校の部活動。

3年生の最後の大会も、関東大会、全国大会へと各競技が進んでいます。

 

私が所属する学校も、某部活動がとても強く、昨年に続き2年連続で関東大会出場という快挙を成し遂げました。

 

この結果はとても素晴らしいことですし、生徒たちには心からお祝いします。

しかし、その裏側は、微妙なバランスをとる現場教師の苦労があったりもするのです。

 

 

「貴校は〇〇部の顧問の先生が素晴らしく、ぜひ指導を仰ぎたい!」

 

という思いで門を叩く。私立の学校や高校では割とある話ですが、公立の中学校でも同じような事態が起きています。

 

中学校の場合、居住地をもとに進学先が決まる学区制が一般的ですが、部活動のためにひとつ(またはそれ以上、通学に片道1時間近くかかる)隣の学区にある学校へ進学することもあります。

 

最近では、水泳部などは数が減っていて(この理由も非常に難しい問題です…顧問の先生は大変苦労されていらっしゃることと思います)、学区を飛び越えてやってくる生徒が私の学校にもいます。こうした生徒を、私の勤務先では「越境した」と言ったりしています。

 

また、先生でなくても、小学校の時にやっていた地域のクラブチームで仲良くなった子と、同じチームでやりたい!なんて思いで越境する生徒も少なくありません。生徒でなく、保護者が懇願するケースもあるので、そうなると学校としては断りづらいのが現状です(私のいる学校では”前例”があるために断れない、断らないようです。うーん…)。

 

そうした生徒は、当該部活動競技における能力は非常に高い反面、学力的にはやや劣る傾向があります。それだけその競技の練習に打ち込んでいる、とも取れますね。そうした生徒への指導は微妙なバランスを問われます。

 

たとえば、学力面で非常に厳しい生徒がいて、夏休み中に補習を実施する、ということになりました。もちろん補習は強制ではないのですが、本人も保護者も、学力面での不安は非常に強いので、できれば補習を受けたいと希望していたとします。

 

ところが、部活動の顧問の先生は補習に行かせることを許しません。その日は練習があるし、公式戦の日も近いからです。「もしお前がその日に補習に行くのなら、今後一切、ユニフォームは着させない!」という厳しい通達が生徒になされ、生徒は悩み苦しむわけです(その子はまじめな子だったので家でも「どうしたらいいかわからない」と大泣きだったそうです)。

 

最終的には、部活動の顧問の先生が練習時間を変更して下さり、補習と練習を両立することができましたが、こうしたケースは少なくありません。

 

また、越境して入学してきたのに、部活動の方針が合わず、遠征などで知り合った他校のほうが練習環境が良い、という理由で転校を検討するご家庭もあります。

 

その考えを否定するつもりはありませんが、学業の重要性はどうお考えなのか、また学校側での指導は「お前は部活動だけガンバレ!」でいいのか、でもそれでは学校の役割もなんだかあやふやになってくる・・・なんて考えていると、よくわからなくなってきます。

 

「今しかできない、今の時期の練習量や環境が大切なんだ」という、小さなアスリートの気持ちもわかりますし、ご家庭の意向もわかります。ただ、中には「プロになる!」というわけでもないのに、同じようなことを言うケースもあります。

 

当該部活動の顧問ではなく、担任の、私の思いは、学業とのバランスを取ってほしい、ということだけなのです。それだけをわかってくれればよいのです。

 

ひとつのスポーツを突き抜けて極めることで得られる経験値は計り知れません。場合によっては、理科の化学反応式や国語の古典、数学の連立方程式などよりも断然大事なのかもしれません。

 

ですが、それでもやはり、学業とのバランスをとってほしい。そう願ってやみません。ただそれだけです。

 

 

 

余談ですが、こうした形で強豪となった学校では、もともとその学区に住まう生徒が入学した時に「その競技は好きだけど、上手い人が毎年入ってきていて練習(量と時間)もハードだから、私は入部できない…」という不利益を被る生徒も潜んでいます。見えにくい弊害ですが、こうしたこともあることを知ってもらえたら、と思います。